根無し草

　春に移り住んだ東京を去った。一身上の都合で引っ越した。引っ越し先は香川県は高松。地図で見ると海浜で針の先ほど小さく見えた、そんな四国の入り口の街。

　東京やその近辺出身の人間が「おまえ四国行け」と言われれば、そりゃもう人生の終わりみたいに泣き崩れて「それだけ勘弁してください」と拝み倒すかもしれないが、俺はもともと瀬戸内出身の人間で、子供の頃だいぶ長いこと四国住んでたこともあったので、そのへんのショックはあまりなかった。

　とはいえ、ここ数年では一番田舎に住むことになった。この前に住んでいた大阪も都会だったから。…高松駅を降りたときから、ああここは地方だなと強く感じた。

　まず人が圧倒的に少ない。休日だというのに、駅前の商店街が閑散としている。寂れたシャッター街と化している地区もある。街の中心である瓦町の百貨店、天満屋も静かなものだ。
　市内を走っている私鉄は毎時4本程度。3〜4両編成。単線もある。
　人が集まる場所と言えば大型ショッピングセンターぐらい。

　都会からくると本当げんなりするような、静寂と過疎と衰退を強く感じる。

　
　でも、高松は俺の地元山口に比べるとこれでも数段上だ。山口市の商店街はもっと寂しいし狭い。山口線はもっと本数も車両数も少ない。駅ビルもなければ自動改札もない。
　ついでに言うなら、アニメイトとゲーム屋とゲーセンがきちんと商店街に存在しているのが凄い。テレビ局もTX系のテレビせとうちが映るし、割と恵まれているところだと思う。

　讃岐うどんが有名とは知っていたが、本当に市中至る所にうどん屋があるのには驚いた。しかも安い。形骸化してない名産をきっちり持っているのは羨ましい。
…山口はふぐが名産とか言うけれど、ふぐ料理屋なんて見たことないし、縁もないもの。

　まあ、あまり長いことこの街にいられるわけではないのだけれど、せっかくの巡り合わせだ。この街をしゃぶり尽くしてみたいもんだ。