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月姫 -A piece of blue glass moon-プレイしたとか(あまりネタバレにならない感じ)

月姫リメイクが発売されて2週間経過したので、色々と感想をつらつらと述べる。まず「発売おめでとう」。次に「良かった。次にも期待している」。旧作の持つ雰囲気を維持しながらも演出をアップデートさせ、魅力を増したアルクェイドルート、旧作とは大きく変わり独立した物語となり堂々ヒロインと名乗れるようになったシエルルート、どちらも新しい月姫の形ではあったと思う。

全体的に

旧作と同じ所謂「ビジュアルノベル」ではある。月姫のような画面いっぱいに文字が表示されるノベルゲームは、今ではあまり見かけない形式であり、クラシックと言えるかも知れない。けれど、当時としてもシンプルに作られていた旧作からはビジュアルも演出も大きく進化。画力や彩色が著しく向上しており、キャラクターが見違えるように美しくなった。2021年でも気後れすること無い一級のグラフィックだろう。さらに演出の進化には一層驚く。ただ文字を送ってるだけでコロコロとキャラクターも背景も次々と切り替わっていく。Fateを順当に進化させ、魔法使いの夜で完成を見せた一連の表現技法というやつだ。ここまで演出を作り込むようなノベルゲームはそれほど無い。

また、同人版の頃から立ち絵の豊富さをアピールしていたが、リメイクでもそれは健在。あらゆるキャラクターが細かく表情やポーズを変えていく。一度しか使われていないような立ち絵もあったように思う。

あまりにもリッチすぎて採算度外視という単語が思い浮かんでしまう。ある意味今のTYPE-MOONだから作れる、予算と時間をかけたゲームだろう。

 

アルクェイドルート

ストーリーの流れとしては旧作と大きく変わらない。しかし、20年の間に向上したキャラクターの作画に圧倒され、さらに演出や音楽も強化されたことで、格段に受ける印象の解像度が向上した。

なんといってもアルクェイドが実に魅力的になったということだ。声もつき、キャラクターデザインが従来より少し若くなったことで、天真爛漫な小悪魔のような雰囲気を持つようになった。旧作では少し年上のお姉さんという印象だったが、ぐっと親近感が増したように思う。

個人的に旧作ではそれほど印象的ではなかったが、リメイクで見違えるように感動的になったシーンもある。それが4日目/火炎血河I(旧作では黒い獣I)のホテルで夜の間は「死」が見えないことをアルクェイドがアピールするシーンだ。旧作でのこのシーンはただの説明だったが、リメイクではここにCGが追加されている。ツギハギだらけの世界しか見えず、どんな生き物にだって死を見てしまう志貴にとって、眼鏡を外してもそのままの姿であるアルクェイドが如何に特別な存在であるか。どうして志貴がアルクェイドに心惹かれているのか、その一端を絵の力で感じられるようになった。

EDも旧作とほとんど流れもセリフも変わっていないのにも関わらず、CG、音楽、演出どれもアップグレードされており、その雰囲気に思わず涙してしまいそうになる。変えてもいいところは変え、変わってほしくないところは変わっていない。アルクェイドルートは旧作の優れたアップグレードとして、令和でも変わらないアルクェイド月姫の魅力を提示できていたのではと思う。

 

シエルルート

一方、旧作と大きく変わったのはシエルルートだ。旧作では半分くらいはアルクェイドと共通だったこともあり、どうなるのかと思っていたがドラスティックに変わった。

一番印象に残ったのはシエル先輩自身の戦闘力がアピールされるようになったこと。旧作だとやられているところしか印象になく、そもそも戦闘シーンもあまりなかった。

今回は中ボスが変更され、志貴とヒロインが明確に共闘するようになった。そう旧作では中ボス戦にシエルが参加していなかった。その強さの描写は凄まじく、旧作との本当に大きな違いとなっていた。志貴がシエルに惹かれた理由の一つが、単身で巨大な敵に立ち向かった姿というのも納得である。

今回の月姫はノエル、マーリオゥといった聖堂教会側の関係者が増えたことにより、シエル側の背景の奥行きが大幅に増した。特にノエルについてはシエルの「罪」側を知る第三者として、旧作にはないシエルの側面を描くことになった。

さらにリメイク版で特筆すべきところはシエルのみEDが2種類あるということだ(アルクェイドは1種類)

一方のEDは、概ね旧作と同じ展開ではあるが、EDの展開が大きく違っている。おそらく旧作を知っているほど驚くと思われる。またもう一方のEDに至るルートは、いわゆる本作のグランドルートとも呼ぶべきもので、まさかの規模、まさかの共闘という20年前では想像もできなかった一大決戦が繰り広げられている。最近のFGOの展開(アヴァロン・ル・フェとかね)に近い規模感といえば伝わるだろうか。従来の月姫が「ご町内の伝奇」だったとしたら、これはシン・ゴジラみたいなものである。2021年のエンターテイメントとしては、このくらい味が濃いほうがいいのかもしれないが、正直びっくりした。

 

まとめ

ようやく発売された月姫リメイク。たった2ヒロイン(EDは3つだが)ではあるが、新しい月姫の形を知ることができた。発売前は分作に対し疑問がないではなかったが、この分量であれば(作りきれないし、プレイしきれないという意味で)分作もやむなしと言えるのではなかろうか。無論、次を早く出してくれるにこしたことはないが…。

アルクェイドやシエルがここまで魅力的にアップグレードされたのなら、月の裏側はどんな風にアレンジされているのか。今から続編が楽しみだ。