GA−芸術科アートデザインクラスの最終巻を読み終えて
きゆづきさとこ展に行ってきた。
青山Gofaというところには初めて行ったのだが、頭に思い描いていたのだが上野の森美術館で開催された「蒼樹うめ展」だったので、あまりにも省スペースな画廊であることにびっくりした。猫の額ほどという表現がぴったりだった。秋葉原のZINに行ったことがあるだろうか?あれを2つ分つなげた程度の広さしか無いように思えた。そんなキャパシティに対して、初日の今日は、あまりにも来場者が多すぎた。それでも蒼樹うめ展の芋洗い状態に比べれば快適とは言えたのだが…。
この個展で展示されている作品は「GA」と「棺担ぎのクロ」のみ。きゆづきさとこ自身はスティング作品やラノベ等でもイラストを担当しているが(自分もユグドラ・ユニオンできゆづきを知ったクチだ)、今回はきらら関連のみであり、「きゆづきさとこ展」としては少し残念だった。
それでもきゆづきさとこの絵を、こういう場所で大きく見れたというのは、それなりに良い体験だった。まあ、観たことある絵ばかりではあったのだが。そりゃGAやクロが表紙になる度に買ってたもんなぁ、きらら。
ZINの特典絵を初め、きららの表紙以外の絵もわりと見たことがあるものが多く驚きが少なかったように思う。それでもきゆづきさとこQAコーナーには興味深い話があったり、描き下ろしがあったりと、見どころはあったと思う。平日にゆっくり見ることをおすすめしたい
芸術科アートデザインクラスは、当初は美術ネタの4コマとして始まったのだが、巻を進めるにつれて、より広範囲の学生生活を描いた作品にシフトしたかなぁと思う。それだけならきらら作品によくある題材なのだが、おれが他の作品と大きく違うと思っているのは、GAが回想の中にある学生生活感とでも言うのだろうか、未来の自分が過去を振り返って描いている、という雰囲気があることだ。
きっとGAの彼女らは進学し、就職し、身につけたスキルを以て何かしら仕事をしているんだと思う…忙しい毎日の中で、帰って寝る前にお酒でも飲みながらあのときは楽しかったなぁ(そして今も楽しい、これが重要)、とつぶやいている、そんな感じだ。
そんな感覚がダイレクトに現れているのがさめちゃん先生・殿先生の会話だと思う。最終巻の以下の台詞は鮮烈だった。
「描く事が競争になり、作業になり、進路になれば、いずれどこかで現実と理想の壁に挫折や諦めが過る瞬間は必ず来る」
「そうなった時に何が根底の支えになるかっていうと、やっぱり純粋に好きだった頃の"気持ち"だなんだと思うよね」
GA-芸術科アートデザインクラス-7巻 P96
GAという作品は、きゆづきさとこ自身の学生時代がベースになっているというのは有名な話だが、自身が純粋に好きだった頃を思い出しながら、GAを描いていたんだと思う。そして、この「好きだった頃の気持ち」というのは、何も美術に限った話ではなく、誰もが持っているものだ。だから「美術」という限定したテーマの作品ではあるが、そのほかのありとあらゆる別の「選択」をした人間にとっても、共通に響くものを感じられる、そんな作品なのではないかと思う。
最終巻は、美術部…3年生組の卒業と如月たちの進級で終える。先輩たちとの別れを描きながらも、新しい出会いの予感を思わせる爽やかな終わり方だった。
まだ棺担ぎのクロという作品は続いているが、こちらも終わりが見えて来ているようだ。今後、きゆづきさとこが、どんな作品を作っていくのか楽しみだ。