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紫色のクオリア

紫色のクオリア (電撃文庫)

紫色のクオリア (電撃文庫)

実はだいぶ前から積んでいたのだけれど、ここ数日で一気に読みきった。面白かった。

とにかく序盤がつらかった。この手のものはたいていそうなのかもしれないが。面白い設定の女の子の説明に終始しているため、事件もエピソードもなくて。買った当初はそこで読むのをやめてしまったのかもしれない。
中盤に事件が起こり、この物語の仕掛が分かってくると、がぜん面白くなるんだけれど。


とにかく量子力学って便利だよね、をとことん詰め込んだ話。収束・観測・デコヒーレント。それ系のタームがゴロゴロ適当に出てくるのだが、それは本筋じゃない。これは全然科学的じゃないすっごく感情的なお話。
すべてはただのたとえだったと言い換えてもいい。夢見がちな中学生が素直になるまでのおはなしとかにね。それを婉曲的・量子力学的にシュレディンガーの猫さん風にすればこんな話になるのだと思う。

他人の運命をどうこうする権利なんてねえよ、か。ループものは数あれど、この結論に至ったのは見たことなかったかもなぁ。出会わなければ良かったとか、新たに出会えて良かった、とかそんな終わり方はあったけれど。
「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんておこがましいとは思わんかね」か。重い言葉だ。たとえ自分が死ぬと分かっていても、それは自分の運命だ、他人にどうこうされる筋合いはねぇ、と言い切れるだろうか。言い切れるなら、そいつはすごく強いんだと思うな。