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帰ってきたヒトラー

下書きのまま放置されていたので、適当に出しておく。本編の細かな内容については触れていない。

 

ドイツという国には興味が尽きない。ヨーロッパで最も工業が進んだ経済大国であり、ドイツ人は極めて勤勉な民族というイメージを今でも持っている。このイメージは、明治時代の日本人にとっても同じだったに違いない。

今更述べるでもないが、ドイツは日本と同じく第二次世界大戦の敗戦国である。日本も戦後は酷いことになっていたようだが、ドイツなんて国家分断の憂き目にあっていることを考えると幾分マシなのかもしれない。

 

ドイツという国は、徹底的にナチスドイツを否定していると聞く。おれはその政治方針がドイツ人に対してどのように受け入れられているのかも知らないが、ある意味賢いと思っている。過去は悪かった。本当に悪かった。弁解の余地もない。と言っておけばいいのだから。負けた国は言い訳もなく、ただただごめんなさいと言っておけばいいと思っている。領土こそ占領していないものの、ドイツはEUを経済的に支配しているのだから。

 

でも本当に、ドイツ人は心の底で、あの戦争のことを、ナチスドイツのことを、どう思ってるんだろうね。

 

それが少し垣間見えるかも知れないのが、先日日本で翻訳版が発売された「帰ってきたヒトラー」。ドイツでベストセラーになっているとか、映画化も決まっているのだとか。最期の12日間どころかアイアンスカイですらセンシティブな扱いなのに、こんな直球な小説がドイツで人気を博すというのは俄に信じられない。別にドイツ人に聴いたわけでも無いんだけれど。

 

あらすじはほうぼうのサイトで読めるので参照してもらいたいが、本作の最大の魅力はやはり主人公であるヒトラーおじさんそのものだろう。古風だが情に厚く、発言は過激だが、ドイツのことを思ってはいる。戦時中そのままのことを発言してそれがエンターテイメントになる…というのはなかなか理解しがたいのだが、日本で言うと鳥肌実みたいな捉え方をされているということなのだろうか…?

なにより相当として修羅場をくぐってきたところから、押し出しが非常に強く頼れる男であるところが好感を強くする。史実通り演説も超絶上手いので舌戦では負けなし。人生経験を重ねた中年であるため、若いカップルを応援したりする余裕もある。あと、オクトーバーフェストをめっちゃdisってるところもあるあるネタとして肯けた。

ドイツ人的には、かなりドイツの政治風刺ネタが盛り込まれており、それがギャグとなっているようだが(ドイツの週刊誌の名前のネタとか)、ドイツの事情に疎い日本人としては、ヒトラーが非常に魅力的に描かれているのが最大の面白さに思えた。

 

でも、それが危うさなのだろうな。風刺だろうがなんだろうが、ナチスドイツの政治思想をギャグとしてそのままお出しして、それが通ってしまうドイツの現状ってのが危ういのだろう。ドイツも戦後半世紀経ち、欧州の平和維持に相当貢献してきたと思うが、その結果として欧州で一番のケツ拭き係になっているようにも見える。ギリシャを見てもね。移民の問題もある。

そんな状況に、ドイツ人は、本当は思うところがあるんじゃないか、と思ってしまう。

 

…さて、翻って我が国はどうかな?

 

 

 

帰ってきたヒトラー 上

帰ってきたヒトラー 上