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8月に見た映画3:「オーガストウォーズ」

誰だよ!これロシア版トランスフォーマーって言ったヤツ!お前か!→ロボット映画が好きな奴、戦争映画が好きな奴、美人ヒロインが好きな奴──あらゆるジャンルが融合したすごい映画が日本に上陸!

おそらくマーケティング担当した人が「ちょうどパシフィックリムと時期かぶるし、ロシアのロボ映画として宣伝した方が受けるだろうなー」とか考えたんだろうか。公式もこんなんだし。

これはあらゆる権威を込めてファック!と言っていい案件だ。はっきり言おう。この映画はロボット映画などではない。SF映画ですらない。この映画は、正しい意味での戦争映画だ。

 

この映画は、2008年の南オセチア紛争に基づいた戦争映画だ。ロシア軍全面協力のもと撮影されていると言うが、別にロシア軍が宇宙からの侵略ロボットと戦ったりはしない。グルジア南オセチア侵攻(あるいはロシアの侵攻)により引き裂かれた母子が再び出会うまでを描いた作品である。

ロシア軍が協力しているだけあって、戦場の描写が凄まじい。物語の中盤で機甲科舞台が廃村で挟み撃ちにあい、ロシア軍は大打撃を食らう。廃墟の2階に設置された銃座からの一斉掃射、戦車に対して放たれるRPG、銃弾に倒れる兵士…。数に勝るはずのロシア軍がグルジア軍に翻弄される。

 

本作の見所は、間違いなくこの戦場だ。ヨーロッパの煉瓦造りの建物が立ち並ぶ寒村を舞台とした銃撃戦や対戦車戦の臨場感こそ一番こだわりを持って作られている部分だと思う。本作はロシア映画ということで、使用される銃火器が東側であるというのもポイントが高い。アメリカの映画・ゲームだと"敵側"の主力火器であるAKが主役なのだ。他にもPK機関銃にT-90、BTR等々ロシア軍の装備がいっぱいいっぱい出てくる。

あの木製のガワのアサルトライフルを抱えて作戦行動する兵士の姿はFPS脳を持つ人間としてはグッと来るものがあった。アサルトライフルの射撃も基本的にセミオート。戦場ではフルなんて使わない。見敵必殺。素晴らしい。

敵の銃撃を味方の戦車の影に隠れてやりすごす。戦車の影にカバーして、少しずつ敵の潜む建物まで移動する。制圧射撃の隙に次のカバーポイントまで移動する。素晴らしい。

敵の待ち伏せに遭い、建物に釘付けにされる。自軍戦車を呼ぶ。戦車の榴弾で敵が潜む建物ごと吹っ飛ばす。素晴らしい。

戦車に対しRPGや無反動砲による攻撃を試みるも正面装甲を抜けない。自軍戦車は弾薬がない。しかし、とりあえず矢面にたち、避難民の盾となる。素晴らしい。

 

この臨場感溢れる戦場描写こそ最大の楽しみであり、見所だと思う。アメリカ軍協力のこの手の映画はあるけど、ロシア軍協力のこの手の映画はなかなか見たことなかった(あったとしても日本ではあまり大々的には取り上げられない?)ので見ごたえがあった。

 

少なくとも、FPS脳を持つ人間として、この戦場描写だけでたいへん満足できた。上映されている場所は少ないが、その手の趣味を持つ人で、機会があれば観てほしいと思う。あと前半の1時間は溜めであることもよく知った上で観てほしい。

 

 

以下ネタバレ。

 

本作品における「ロボット」というのは、子供が現実をそう見立てているだけである。侵攻してくる敵軍を「悪の帝王」に、自分を守ってくれる父親や母親をロボットとして観ている空想である。

子供の目から見た戦争というのを比喩的に描いている演出なのだが、何故かそれが大きく喧伝されてしまったようだ。

全くもったいないなぁと思う。