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もし月からナチスがやってきたら アイアンスカイ

「月からナチスがやってくる」

巷で話題のB級バカSF風刺映画観てきた。面白かった。

コンセプトからしてバカ映画で、実際ギャグとパロディ満載。劇場も笑いに包まれていたなー。…客層はなんか映画オタみたいなのが多くて濃かったですが。

特にパロディは秀逸。劇場で「ん…?このシーンどっかで」と見覚えのある展開が繰り広げられて。その数秒後に「あの映画のパロディだこれ!」と気付き、思わず吹き出してしまった。そのシーンでは、ある映画の名シーンをパロディにしていた。この映画だからこそのパロディ元だなぁと、後から感心した。

他にもパロディや小ネタ描写が多くて、ここはあれを意識してるのかなーみたいな風に見ていた。ちなみに本作のパンフレットにて、劇中にどんなネタがあるのかネタバレしていたりする。

 

でも…ただパロディやギャグだけに終わるんじゃなくて、わりと政治的に危険なネタを扱っていたりする。そもそもナチスネタってだけで欧米圏では一種のタブーだと思うんだけれど、それを逆手にとってアメリカを批判していたりする。保守的な言動と宣伝攻勢こそが大統領になるための近道…まるでアメリカってナチみたいね、とでも言っているみたい。

もちろん本作はナチスを礼賛しているわけじゃない。ナチスはナチスで愚かな集団だったね、みたいな描き方をしているから。ベルリンでも上映できたぐらいだもん。(あ、でも北朝鮮ではムリかな…。)

ギャグとパロディばかりの映画だけれど、風刺を今時本気でやっちゃうなんて、そういう意味では真面目な映画だとは思ったよ。

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なんで戦場のヴァルキュリアとコラボしてるんだろう…

 

公式やメインビジュアルでは、レナーテ・リヒターなる胸元むき出しのナチ服のチャンネーが主人公・ヒロインのように見える。実際ヒロインなんだけれど、絵面から見えるイケイケなイメージとは違ってわりと純朴なのが印象的でした。おっぱいナチ服あまり着ないし。ナチスを信仰していて、総統の愛が世界を救うと本気で信じていた…田舎娘なのです。そこんとこのギャップがとてもかわいかったな。

演じているユリア・ディーツェという女優は聞き覚えがなかった。来歴を見るとドイツのテレビドラマ中心で活躍してる人なんだとか。そりゃあまり知らないかなー。

 

他に良かった点としては、月面のナチス基地のレトロフューチャーっぷりにビンビン来た。月面上にコンクリートで建造された閉鎖空間での暮らし。まるで大戦時からそのままあるような調度品が置かれていたり、音楽をレコード…蓄音機で再生していたりとまるで戦前そのままなのが良い。

同時に妄想も刺激された。この月面基地では、一体食料や薬品の生産はどうなってるのだろう(ザワークラウトあるの!?)、電力や酸素の供給はどうなっているのだろう…よし、それを実現する設定はどうだろう?と次々連想が広がったな。

ナチスは戦後まもなく月面へ逃げたという設定だから、基地内の設備は基本的にコンピュータに頼らずすべて人力or機械で制御というあたりもまたGood。ゲームで言うとMetro2033っぽい雰囲気だったなぁ。

 

ということで、ナチス好き、政治風刺好き、頭の悪いSF好きは観に行くべき作品でした。日本も活躍するよ!

 

 

 

 

…これまでおれは映画を見てB級B級と騒いできたけれど、本当の意味でのB級を見たことなかったのかもしれない。この映画のキャッチフレーズを初めて目にしたのは、2012年夏のワンフェスのことだった。アイアンスカイは、映画オタには有志のカンパで作られている映画として前々から有名だったらしいが、おれは全く知らなかった。でも、キャッチフレーズとビジュアルがすごく印象的で公開されたら観に行くかーという気になったことを覚えてる。

そう、この映画はオタク層をターゲットにしたマーケティングを行っているらしい。ワンフェスだけでなくコミケにも宣伝に出ていた。もちろんナチ服で。オタは喜ぶだろうが一般的にはそんなにそそられない宣伝だろうか。ラブストーリーも一応あるんだけどね。…この映画はオタ層向けの映画ってわけでもないのに、こんな売り方をするしか無いのがある意味残念だけれど…でもこれを許容できるのも今じゃオタ層なのかなぁとか思うと、なんだか少し解せない。