ツインテールの吸血鬼はお好きですか

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イヴの時間

 そのアニメの存在を知ったのが4年も前なのに、劇場版は公開1ヶ月も経ってから観に行ったアニメがあれば、たった3週間前に初めて観たのに、劇場版公開初日に舞台挨拶を観に行くような作品もある。

 極めてミーハーだけど極めて出不精な俺が、朝から池袋まで出かけてきたのは惑星直列並に珍しいことなのかもしれない。それともこの作品がそうまでさせる魅力を持っているということだろうか。


 池袋テアトルダイヤ。到着すると中は上映待ちの客でいっぱいだった。物販は比較的好いていた。その中に登場人物のイラストを描いたタンブラーがあった。

 6、7日にタンブラーを買うと、本作品に出てくる特製コーヒー「イヴレンド」をその場でタンブラーに注いでサービスしてくれるという。面白い企画だと思ったし、タンブラーが欲しかったし飲み物も欲しかった。だからサミィ柄のタンブラーをひとつ購入した。
 この「イヴレンド」をすすりながら映画を観た。







 俺は考察というのが苦手なのですよ。国語の問題っぽく言うなら「作者の言いたかったことはなんでしょう」って感じかな。俺は「そんなの
作者以外わからねえだろ」って返してしまうタイプなんだ。
 考察する過程が作品の理解を深めることは知っている。新しい見方を提供することも知っているよ。
 でも俺は読み解くのが苦手だから、結局「面白いか」「面白くないか」の二元論になっちゃうんだ、俺は。その背景には自分でも知覚できてない思考があるんだろうけれど。


 けれど、イヴの時間は、二元論じゃ割り切れなかった。話はよくあると言えばあるし、無感情なロボットが感情を持つなんて日本のアニメじゃ先例がありすぎる。けれど、どこか新しい感じがしたのは何故だろう?

 舞台挨拶の監督が「セリフの掛け合いを重視した」と言っていたが、テンポのいい会話が続くこと、適度に間があること、それが魅力につながっているんだろうか?
 アンドロイドの輪や教室の黒板などのオブジェクト、イヴの時間の空間が醸し出す地続きの近未来なビジュアルがいいんだろうか?


 エピソード的にはコウジとリナが一番良いと思った。どんでん返しにどんでん返し。俺はマサキと同じ誤解をしていたので、オチにびっくりした。理解したい、か。

 キャラクター的にはやはりサミィが一番魅力的だった*1
 バレて赤面するところ、リクオに褒められて口元が上がっているところ、鏡の前で髪を結う場面などなど。この映画の評価を「サミィがかわいいからいいでしょー」で済ませられるぐらいかもしれない。


 ストーリーはあくまでリクオの視点から観たものなんだな。ずいぶん唐突に終わったなぁという気がした。バックグラウンドで色々やっかいなことが起こり、楽しい時間が長く続かないことも示唆されているのに、何も解決はしていない。
 いや、解決することがこの作品の本質じゃないんだな。EDスタッフロールのカットで大まかなことは理解できたし。
 投げっぱなしにも見えるけど、これ以上語るのは陳腐になるというのもわかる。可能性だ、種まきだ、たぶん、そんなところなんだろう。



 本作を知ったのは、PlayStationHomeで映画の宣伝のために1話から上映しているということを友人から聞いたことがきっかけだ。ほぼ単館上映作品を全国展開なHomeで宣伝するのはどうかと思うが、俺に届いたのだからマーケティング担当も案外目の付け所悪くない。



 今現在Homeでは3話まで上映されている。俺は2話まで観て3話を観に行ったことになるな。まったく初見じゃないけど、半分以上初見、このぐらいのスタンスで良かった。全て知っているわけでないし、全く知らないわけでもない。一番楽しめたかもな。




 余談。


 Homeでイヴの時間を観ているときに、友人がメッセージを投げてきた。

「君は人間と鳩との違いって一体何だと思う?」

 ちょっと戸惑ったけれど、すぐに思い当たった。テレビアニメ「To Heart」第11話において、長瀬が浩之に対し投げかけた言葉だ。印象深かったシーンだ。

 君は人間と鳩との違いって一体何だと思う?
 それじゃあ逆に人間と鳩が似ているところはどこだろうねぇ

 それは両方とも同じ生き物と言うことだ
 つまり鳩と人間との違いなんてものは、ほんの少し見方を変えるだけで近くなったり遠くなったりするもするということさ


 質問を変えようか
 機械と人間との違いはどうだろうねぇ

 私はこう思っていたんだよ
 機械は人間が作ったもの、だけど人間はそうじゃない


 でもね、考えてみれば生き物だって作られたものなんだね
 偶然と環境、そして自然と


 君はどう思います?人間と機械との違いについて


 所詮機械はものを考えられない、与えられたプログラムをこなすだけ
 どんなに精巧に作られた機械でもけして人間にはなり得ない


 いや失礼くだらない質問をしてしまったようだね

 こう、長瀬は淡々と呟くわけだ。それに対し浩之はこう答える。

 待ってくれ
 ロボットだろうが鳩だろうが、一緒に泣いて笑って、喜び合えること、それが出来る仲間なら、俺はそれでいいと思うぜ


 このセリフがイブの時間にも刺さるなぁと思った。

*1:今日までサミ"ィ"じゃなくてサミーかと思ってた。公式的には前者