ツインテールの吸血鬼はお好きですか

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Steins;Gate 「俺が…俺たちが厨二病だ!」

 俺にはこのゲームが泣けるかどうかはわからない。俺にはこれが99%と科学と1%のファンタジーだとは思えない。俺にはこのゲームとカオスヘッド、どちらが上かはわからない。
 けれど、俺がこのゲームを通じて一番強く感じたのは、同じセリフでも時と場面が違えば全然違う受け取り方ができる、そういう面白さだ。

 「我が名は鳳凰院凶真である!」このゲームの主人公オカリンこと岡部倫太郎は、厨二病の痛い大学生という設定だ。冒頭から繰り返される彼の強烈な黒歴史ワードの数々に、このゲームから離れてしまう人も結構いることだろう。…別にそれを我慢する必要はない。この主人公はどこかおかしい。おかしいと思う方が普通なのだ。そこで面白そう、と読み進める方がおかしいのだ。

 「我が名は鳳凰院凶真である!」オカリンは何度も繰り返す。その度にラボメン―彼の友人たち―にツッコまれる。「何言ってんの、オカリン」「オカリンはオカリンだよ」とな。それでもオカリンは「鳳凰院凶真」いう名乗りをやめない。

 そんな痛々しい彼だが、本当は普通の、仲間想いの、幼なじみ想いの青年だ。一章が丸々入っている体験版でもその片鱗が見えるだろう。爆発のときの「まゆりをかばったのは正解だったな…」とか。ストーリーを進めていけばラボメンのことを本当に大事にする彼の姿をいくつも見ることが出来る。
 ならば本当は気の優しい青年であるオカリンが、どうして痛々しい狂気のマッドサイエンティスト「鳳凰院凶真」を名乗るのか。どうして厨二発言を繰り返すのか。
 …その理由はストーリーの進行と共にわかってくる。そしてそれがわかってくると「我が名は鳳凰院凶真である!」に対して抱く感想が変わってくる。
 
 ストーリーの最後に彼はまた叫ぶ「我が名は鳳凰院凶真である!」。しかし、その発言に厨二病の影はない。確かに字面にすれば"痛い"セリフだ。しかし、伝わってくるのは彼の心情の痛々しさの方だ。どうしてオカリンはそのように叫ぶのか。それが痛いほどわかって、だからこそ彼の悲痛な叫びが胸を打つ。


 この同じセリフなのに最後には違って聞こえるってのは、最近の創作で言えば「ガンダム00」の刹那が最も近いだろうか。「俺がガンダムだ!」刹那の"痛い"叫びはWeb上を唖然とさせた。しかし、どうして彼が「ガンダムだ!」と叫んだのか、それがしだいに明かされる。1期最終回「俺が…俺たちがガンダムだ!」名台詞だと思う。そこに"痛さ"はなく、仲間たちの想いを受け継いだことだけが伝わってくる。
 奇しくもオカリンのCVは刹那と同じく宮野真守。実に素晴らしい起用だと思う。

 (オカリン、もういいんだオカリン)
 このゲームは、そういう声をオカリンにかけたくなるようなゲームだった。…そして、だからこそTrueEDの「厨二台詞」が一層輝くんだよな。