ツインテールの吸血鬼はお好きですか

Do you like a twintail vampire ?

CHAOS;HEAD NOAH

CHAOS; HEAD NOAH (カオスヘッドノア) (通常版) 【CEROレーティング「Z」】

CHAOS; HEAD NOAH (カオスヘッドノア) (通常版) 【CEROレーティング「Z」】

 春先に購入したのだが、最近ようやく全ルート攻略し終えたので、簡単に感想でも書いておこうと思う。すげぇ今更だ!

 そもそも俺が「カオスヘッド」に興味を抱いたのは、ささきむつみ原案によるいかにもギャルゲギャルゲした絵なのにZ指定というギャップだったりする。「妄想」だとか「渋谷」なんてキーワードはあまり気にしちゃいなかった。けれど、今はそういうとこも含めて面白かった!と思える。渋谷行っちゃったもんなー。

 俺にとって「妄想」を主題にした作品で真っ先に思い浮かぶのは"妄想心理ノベル"「ジサツのための101の方法」とか「さよならを教えて」だったりするんだが、この「カオスヘッド」はそれらと「妄想」の使い方が違う。本作の「妄想」はもっと具体的で直接的なイメージだ。エロい妄想だったり、残酷な未来だったり、神であるという誇大妄想だったり。さらに一歩押し進めて「妄想」を具現化して、魔法のような力を行使するという要素もある。悪い言い方をすれば実に中二病的なライトノベルのノリだ。

 しかし、本作の主人公拓己しゃん*1は、カッコイイ主人公とはほど遠く、全力で後ろ向き。自称キモオタ。心の声の威勢はいいが、人前ではボソボソと喋ることしかできない非コミュ*2。この作品を手にとるのはたいがいオタだろうが、拓己に共感できる人ほとんどいないだろうと思う*3。そのへんが、他作品と一線を画している部分だと思う。

 そんな主人公だから取り巻くキャラクターもどこか病んでいて…病んでない方が少ないというか。ビジュアル的には本当ギャルゲーチックなんですけれど…「ま た メ ン ヘ ル か !」という拓己の心の声に同意してしまったぐらい。
 俺は現在ゲーマーアイコンにしてる優愛さんが好き。この人は第一章のボス的な存在で、プレイヤーに対しまずこの物語の狂気を見せつけてくれる人だ。おっとり系お姉さんにして、偏執的で二重人格、素で最も戦闘能力がありそうな人だ。問い詰めるときの台詞回しが絶妙で、「し・っ・て・る・よ・ね?」のくだりは何度やり直しても思わず聞いてしまう本作で最も好きな場面の一つだ。専用ルートではヤンデレ分も見せてくれる素敵な人だ。…同時に本作の残念な点は、こんな素敵な人が後半ほとんどフェードアウトしてしまうってことだ。キャラクターは多いけれど、うまく使い切れてないなぁという印象も。

 本作では結構ネット関連の用語が多用されるんだが、あまり嫌らしく感じないのが結構不思議。オタ作品にありがちなんだけれど、流行言葉を作中で安易に用いると作品が出る頃に風化してしまっていて、別の意味でアイタタ…となることがある*4。けれど、「カオスヘッド」は言葉のセレクトがうまいのか、主人公がネット中毒のキモオタであるという前提があるからだからか、すんなり入ってくる。たぶんこの印象は、3年後にプレイしても変わらないんじゃないかなぁ。言葉の流行廃りはあっても、2008年、あるいは09年のオタはこうだった、と思えるから。

 そんな感じで、実に面白い作品でした。演出も凝っていたし、リップシンクもいい感じ。Z指定らしくグロい表現もある。それに1280x720という解像度は、PCゲーでもなかなか味わえない説得力ある美麗さがある。ギャルゲ耐性が無い人にはオススメできないけれど、恋も夢もねえ、出てくる女はみんな目が死んでる、一風変わったゲームがやりたい人にはいいんじゃないかな。


 最後に「CHAOS;HEAD NOAH」が、いわゆる「完全版」であることについて、言及しておきたい。PC版には無いルートが加わっているしな。この手のコンシューマ移植ではよくあること、とは言えやっぱりひっかかる。今回は俺が得をしたが、今度のシュタインズ・ゲートは360版が先に出るわけで。その先にまた何か出るかもと思うと…怖くないというのは嘘になるな。俺は信者買いできるほど何かにのめり込めない人間だから…。

*1:狂気系のキャラクターには「拓」という名前が入ってることが多いという。有名どころでは月島拓也とか。狂気の扉を"拓"くらしい。

*2:CVの吉野裕行が良い演技しすぎてむかつくぐらい

*3:思春期的自己存在への悩み、とかならオタに受けそうなのにそういうのは意図的なのか全く無い。

*4:メイビーあたり…