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一般人の何気ないオタネタが、俺をハラハラさせる

 近年、ネットの領域の拡大が、はたまたマスメディアが騒ぎ立てるせいか、一般人が「萌え」や「ツンデレ」に代表されるオタ用語を知り、濫用する傾向にあるように思う。ソースは俺が最近行った飲み会やカラオケな。
 ああ、好きに使うがいい。もはやそれらの用語はオタだけのものじゃない。だがね、彼らは「一般人」と言う単語がどういう意味を持つのか、オタがいふとれんびんとぶべつとちょうしょうをこめて、そう呼ぶのか、理解できないだろうね。


 俺はカテゴライズするならオタだろう。実際はさして知識があるわけでも技術があるわけでもないがね。それでも、俺は常に業を背負ってる感覚だけはある。オタであるってこと、人前では決して主張しないこと、趣味をひけらかさないこと、知らぬ、存ぜぬを通すこと。「Mingくんってアニメとか詳しいよね?」って訊かれても俺はすぐ否定する。外見がそれっぽいからよく言われるけどな!…それは謙虚でもあるし、「業」によるものでもある。これまではそれで済んでいたと思う。

 
 だが、昨今は違う。ネットがすべてを変えてしまった。たとえばニコニコ動画か、ああいったネットの情報が一般人とオタネタを直につないでしまい、過程も前提もなしに、一足飛びに一般人にオタな世界に見せてしまった。もはや彼らにとって、「ハルヒ」や「らきすた」がオタの代名詞なのだ。それは一見正しいが、間違っている。


 他の多くの趣味・趣向と同様に、オタも一枚岩じゃない。アニメだけに限っても、ロボ、美少女、声優、作画、楽曲、など様々な系統にわかれてるじゃないか。だが、ネットはその中で最もわかりやすく、センセーショナルな部分だけを取り出してしまう。それが「オタだからハルヒ好きだよね?」って考えを一般人に植え付けてしまうんだ。


 以前知人の一般人とカラオケ行ったとき、俺のオタ趣味を知っている人が、気を遣ってくれたか、ハルヒの曲を入れてくれたことがある。その人としては俺がそういうの好きそうだから、って考えがあったんだと思う。ありがたくて涙が出そうだった。でも、違うよ、全然違うんだ。俺はオタだからこそ、人前でハルヒの曲なんて歌えない、そんな屈折した感情があるんだ。


 先日の飲み会で「組曲」を話題に出した輩がいた。例のあれだ。アンインストール、アクエリオンらきすた…。ロックマンのアレも入ってたかな。歌ったり、騒いだり。それで「元ネタ知らないけどニコ厨だから知ってるー」とか臆面もなくおっしゃる。俺がその会話を聞いていてどんだけハラハラしたことか。

 「知ってる?」と無邪気に訊いてくる。知らねえよ、オタの誰もがニコ動文化に精通してると思い込むな。そりゃ元ネタだいたいわかるけどな。「それもう鮮度低いだろ」と言えるわけがない。「"美しければそれでいい"の方がいいよね」とか、そういう答えを彼らは求めてないだろう。


 本当にオタな会話していいのか?カラオケで平沢進でハーイーヤイしてもいいのか?エリンさんのエロさについて語っていいのか?「黒髪ロングストレートでおっぱいのおおきな澪ちゃんみたいな嫁ほしーなー」とか妄想垂れ流していいのか?
 そうじゃないだろう。だから俺は口を閉じるし、嵐が過ぎ去るのを待つ。無自覚に、俺をハラハラさせる、そんな一般人のオタネタを、俺は怖いと思う。