ツインテールの吸血鬼はお好きですか

Do you like a twintail vampire ?

さいたまチェーンソー少女

 病んだ少女がチェーンソーで同級生を惨殺するという触れ込みのコミック。ひぐらしか、はたまた未来日記か。と思って、地雷覚悟で手に取ってみたら、「我が一族140年の歴史が生み出したチェーンソー格斗術、貴様に敗れるか!?」みたいな話だった。えー。


 アイコンを弓塚さつきにしてるぐらいだから、基本的にそういうシチュエーションって好きなんです、俺。「少女が血の衝動に耐えきれず、凶行を犯す」みたいな。でもそれだけじゃなくて、同時にそこに哀しみが無くちゃならない。前者はあっても、後者がない気がするのが最近の創作の世界。完全ぶっ壊れただけってのはつまんないのよ。汚れちまつた悲しみってのが、ビンビン来るのよ。


 未来日記が殺人ゲームを、ひぐらしが猟奇事件を、それぞれ扱っているとする。なら、さいたまチェーンソー少女はどうだったか、というと、意外なことに猟奇はどうでもいいってスタンスをとってる。クラスメート惨殺しまくったことは大した問題じゃない。それを超越したところに問題があって、あるいは無くて、惨殺ってのは通過点として存在してるにすぎない。

 敢えてこのマンガを分類するなら能力バトルマンガ、かなぁ…。その文脈では型月あたりが醸し出す雰囲気と似て無くもないんだけれど、悲哀とか感じる以前に、突飛な展開に「ギャグだこれー」って思っちゃうのが先に来る。シリアスなシーンにこぞって挿入されるギャグ顔や恋愛シーンがそう思わせるのか。シュールな効果を狙ってるのかもしれないけれど。だからこそ「少女惨殺」がテーマとはあまり思えないんだよね。

 それともセカイ的な思考で話を捉えるべきなのか。彼と私の間が全てで、他の全ての事象は関係ない。信じられるのはチェーンソーだけ。宇宙戦争も糞喰らえだ!てな具合に。基本的にこのマンガは主人公の少女と、恋人の少年だけいれば完結してしまう。その他の登場人物の設定や行動にはあまり意味が無くて、それこそ「障害」を具象化しただけなのかもしれない。
 
 それにどの人物も極めてベクトルが一方向に描かれていて、思考が片寄っている。どのキャラも迷いがない。それはたぶんわざと。電波は電波。アメリカ人はアメリカ人。宇宙人は宇宙人。そこに何故そういう人物設定なの?って質問は存在せず。大阪人だから阪神ファンだよね、ぐらいの適当さで決められてる。だからこの話はねちっこさを全く感じない。

 だいたい何故さいたまなのか。島根じゃいけなかったのか。栃木は?埼玉であることにそんなに意味がない。語感が良かったとかその程度だろう。この話は意味を求めるものじゃない。

 俺の求めてるものはこのマンガには無かった。けれど、昨今の猟奇的な、いわゆる"ヤンデレ"的なヒロインが出てくる創作に比べると、意外なほど満足できてしまったから不思議。

 結局「チェーンソー少女書きたかっただけなんじゃね」ってのが最初にあって、そのためだけに適当に設定とかお話をぶっ立てたって気もするんだけれど。


―最後にツッコんでおくと、リアリティを求めるためと言って3階から飛ばないでください。